”実子誘拐”

日本では以前より、一方の親(多くは母親)による同意なき子供の連れ去りが横行しています。
近年のネットやSNSの普及に伴い、このような行為は「実子誘拐」と呼ばれるようになり、被害者のコミュニティも日本各地に多数存在しています。
この「実子誘拐」について、法的視点から考察してみます。

刑法224条
(未成年者略取及び誘拐)
第二百二十四条 未成年者を略取し、又は誘拐した者は、三月以上七年以下の懲役に処する。

日本の刑法において、未成年者の「略取・誘拐」を規定する条文はこれだけです。
すなわち、「『誰』による誘拐であるか」については定められておらず、条文通りに理解すれば、当然ながら一方の『親』による略取・誘拐も、刑法224条に抵触すると判断されて然るべきでしょう。
しかしながら現時点では、行政・裁判所・警察・児童相談所等々の公的期間において、
『最初の連れ去りは罪に問われず、連れ戻す行為は誘拐にあたる。』
という、何ら法的根拠のない運用が常態化しています。

略取(りゃくしゅ)とは、暴行、脅迫その他強制的手段を用いて、相手方を、その意思に反して従前の生活環境から離脱させ、自己又は第三者の支配下に置くことをいう。
誘拐(ゆうかい)とは欺罔、誘惑などの間接的な手段を用いて、相手方を従前の生活環境から離脱させ、自己又は第三者の支配下に置くことをいう。
(Wikipediaより)

実子誘拐における『略取』は、主として抱きかかえて連れ去ることができるような年齢の子が対象として想定できます。
『誘拐』は、小学生以上程度の子が対象として想定され、「欺罔(きもう、騙すこと)」や「誘惑」の例としては、
・(多くの場合、父親が不在時に連れ去るため)「お前だけ一人で残るのか?」
・「別居することになっても、父親とは自由に会える。」
・「お前が一人で残ったら、父親から危害を加えられるかもしれない。」
などといった言葉で子供を不安にさせ、あるいは騙し、着いて行かざるを得ない状況にする事が多いようです。

柴山昌彦衆議院議員により、各警察署に対し以下のような連絡文書が送付されていることが公表されましたが、現場では旧態依然の運用が継続していると言わざるを得ず、告訴が受理されたという報告は未だごく少数です。
とは言え、私としても、子供にとっての母親を犯罪者として指定することを望んでいるわけではありません。
一刻も早く、「連れ去り」も「連れ戻し」も同様に誘拐罪であるという認識が全日本国民に浸透することで、不当な連れ去りの抑止力となり、親子が断絶されることがなくなるよう願っています。

民法第752条
(同居、協力及び扶助の義務)
夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならない。

この条文については明白です。
夫または妻が、特段の理由や互いの同意なくして、別居することや、協力して子供の養育に携わることを不可能な状態とすることは違法行為と言えます。

民法820条
(監護及び教育の権利義務)
親権を行う者は、子の利益のために子の監護及び教育をする権利を有し、義務を負う。

「親権を行う者」すなわち、(一般的には)父母は、子供を養育する権利と義務の双方を負っています。
一方の親による同意なき不当な連れ去り・親子断絶は、他方の親の権利義務を奪う行為そのものですので、明らかにこの条文に違反していると言えます。

民法第821条
(居所の指定)
子は、親権を行う者が指定した場所に、その居所を定めなければならない。

「親権を行う者」は当然ながら父母双方です。
強制力をもって一方の親から居所指定権を奪う行為はこの条文に違反すると言えるでしょう。

民法第818条  第3項
(親権者)
親権は、父母の婚姻中は、父母が共同して行う。ただし、父母の一方が親権を行うことができないときは、他の一方が行う。

現在、日本においては、世界的に見て稀有な「離婚後単独親権制度」をとっていますが、逆に言えば、この条文に基づき婚姻中は「共同親権制度」であることが明らかです。
「実子誘拐」事件は多くの場合、子供を連れ去った親は他方の親と子の交流を断ち、離婚成立前の共同親権下における、別居親が親権を行使する機会を強制的に奪っています。

民法第766条
(離婚後の子の監護に関する事項の定め等)
1. 父母が協議上の離婚をするときは、子の監護をすべき者、父又は母と子との面会及びその他の交流、子の監護に要する費用の分担その他の子の監護について必要な事項は、その協議で定める。この場合においては、子の利益を最も優先して考慮しなければならない。
2. 前項の協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、家庭裁判所が、同項の事項を定める。

この条文は、離婚後においても、子供が父母双方との面会ができることを保証するための条文です。
しかしながら現実には、子供と同居している親の意向のみで、別居親と子との面会が一切叶わないというケースが多いようです。
「面会交流」(単に親子が会うという当たり前の行為に対してこの語は相応しくないのですが)の頻度について取り決めがあったとしても、強制力があるものではなく、同居親の一方的な意向により反故にされても罰則はないに等しいのです。
※「間接強制」という制度もありますが、機能しているとは到底言えません。

このように(状況によりその他にも多々あるかと思われますが)、日本における現行法に限って考察しても、(DVや虐待からの緊急避難を除く)一方の親による同意なき子の連れ去りが違法であり、その他複数の法律に違反していることが明白です。
にも関わらず、
・連れ去りは合法、連れ戻しは誘拐とする。
・別居親は同居親により、子を養育する機会を剥奪される。
・別居親は子の居住地を知る(指定する)術を剥奪される。
・別居親は子がどのような環境下で養育されているかを知る術も剥奪される。
・子供を別居親に会わせるか否かは、同居親が絶対的な決定権を持つ。
という運用が、行政・裁判所・警察・児童相談所・弁護士等、権力や権限を持つ機関や人物により、常態化しています。

刑事訴訟法第239条
(告発)
2.  官吏又は公吏は、その職務を行うことにより犯罪があると思料するときは、告発をしなければならない。

また、上記刑事訴訟法により、公務員には「告発義務」が課せられており、業務上で犯罪があると知り得た際には告発する義務を負っています。
しかしながら、行政・裁判所・警察・児童相談所等の職員(公務員)がこの義務を認識し全うするという覚悟を持って業務に当たっているようには見受けられず、「誘拐」や「子供に対する虐待」等を知っていながら、無責任極まりない態度で携わっているとしか思えません。

したがって、これらの犯罪を抑止する効果が期待できるような、より厳格な条文にそれぞれ改正する必要があるのかもしれません。

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